読後感『ニッポン社会』入門:コリン・ジョイス
- 2015/10/01
- 00:02
灯台下暗しという。実際に灯台を観察すればわかるが、確かに足元は暗い。灯台では光を遠方の船舶から見えるようにする目的で建造されているから、足元が照らされてなくても一向に構わないし、足元に光が拡散すると、本来の目的のためのエネルギーの一部を足元を照らすのに使うことになり、省エネにならない。厳密に言うと、頭上に遠方を照らす強烈な光源があると、光の散乱などで足元も多少明るくなっているはずだが、強い光とのコントラストで逆に足元が暗いような錯覚に陥ってしまう。このあたりの事情は実際に光度を測定したわけではないので、推測に過ぎないが。
灯台下暗しとは、しかし灯台の基礎部分が暗いことを指摘したものではない。身近にある物について、それを他から区別して意識することが稀だと言う事を述べたもので、その最たるものが自分たちの言葉や習慣だ。私たちが当然と思っている様々な事柄は異郷の地に住む人の目にどう映るか。昔から『ジャパン アズ ナンバー・ワン』だとか『菊と刀』だとか、日本論、日本人論が出版されると一定以上の部数を重ねてきた。自分の事は他者に指摘されて初めて分ると言う事実を物語っている。他にもその類の本が求められる理由はあると思うが、その辺の事情については触れない。
ここに紹介する本は英国人ジャーナリストが日本に特派員として滞在し、その後フリーのジャーナリストとして活躍した人が、英国人の目で見た日本の様々な表情を紹介している。読んでいると思わず『そうそう!』と膝を打ちたくなる箇所が随所にちりばめられている。所々、『?』と思う事も無い訳ではないが、とても興味深く読み終えた。それに『?』な箇所は著者が面白半分にというか悪乗りして綴っているところで、勘違いしているわけではない。とても日本語に堪能で、日本文化の詳細に通じている。
私が読んでいて一番惹かれたのは、『東京「裏」観光ガイド』だ。私も昔東京で仕事をしたことがあるし、仕事をしなくてもしょっちゅう東京には行くのだが、彼が訪ね歩いたところ全てに一度も行った事が無かったのだ。これは日本人としてちょっとまずいかも。そんなことを考えた。それに彼の文章を読んでいると、一度行っておかないと損だ、そんな気になってしまう。公園あり、銭湯あり、ビヤガーデン、バー、博物館などなど、多岐に亘る。10年間の日本生活の中で、本当に寸暇を惜しんで主に東京を歩き回っていたのだということが分る。
さて、この本に上げられている公園やバー、博物館など、一つずつでも東京に行ったついでに訪ねてみよう。実は半年ほど前に孫の顔を見に行ったときに、深川を尋ね、伝統的な深川飯を食べた。漁師さんの食べるどんぶり物だから、高級料亭の懐石料理などとは趣が異なるけど、私は美味しく食べた。妻は味付けがしつこいと言っていたが、その点には同意。汗をかくような仕事をしていて、短時間に食事を済ませたいというときに、汗の中に失われたナトリウムを濃い味付けの塩分で補い、短時間にかっ込むためにはこうしたどんぶり物が一番だ。
コリン・ジョイスという人は来日した当初、神戸の日本語学校で語学の勉強をしたらしい。この本の中にそのときの勉強中のことも書いてあった。当然そういった経歴の持ち主だから、本著も彼が日本語で書いたのかと思ったが、その点は違っていた。神戸で日本語を勉強していた時の日本語の先生(の一人?)が翻訳を担当しているようだ。道理で達者な日本語だと思ったが、もしかすると、本人も達者な日本語で文章を書けるのかもしれない。すぐ読み終える分厚さだし、退屈しないのでお奨めだ。
灯台下暗しとは、しかし灯台の基礎部分が暗いことを指摘したものではない。身近にある物について、それを他から区別して意識することが稀だと言う事を述べたもので、その最たるものが自分たちの言葉や習慣だ。私たちが当然と思っている様々な事柄は異郷の地に住む人の目にどう映るか。昔から『ジャパン アズ ナンバー・ワン』だとか『菊と刀』だとか、日本論、日本人論が出版されると一定以上の部数を重ねてきた。自分の事は他者に指摘されて初めて分ると言う事実を物語っている。他にもその類の本が求められる理由はあると思うが、その辺の事情については触れない。
ここに紹介する本は英国人ジャーナリストが日本に特派員として滞在し、その後フリーのジャーナリストとして活躍した人が、英国人の目で見た日本の様々な表情を紹介している。読んでいると思わず『そうそう!』と膝を打ちたくなる箇所が随所にちりばめられている。所々、『?』と思う事も無い訳ではないが、とても興味深く読み終えた。それに『?』な箇所は著者が面白半分にというか悪乗りして綴っているところで、勘違いしているわけではない。とても日本語に堪能で、日本文化の詳細に通じている。
私が読んでいて一番惹かれたのは、『東京「裏」観光ガイド』だ。私も昔東京で仕事をしたことがあるし、仕事をしなくてもしょっちゅう東京には行くのだが、彼が訪ね歩いたところ全てに一度も行った事が無かったのだ。これは日本人としてちょっとまずいかも。そんなことを考えた。それに彼の文章を読んでいると、一度行っておかないと損だ、そんな気になってしまう。公園あり、銭湯あり、ビヤガーデン、バー、博物館などなど、多岐に亘る。10年間の日本生活の中で、本当に寸暇を惜しんで主に東京を歩き回っていたのだということが分る。
さて、この本に上げられている公園やバー、博物館など、一つずつでも東京に行ったついでに訪ねてみよう。実は半年ほど前に孫の顔を見に行ったときに、深川を尋ね、伝統的な深川飯を食べた。漁師さんの食べるどんぶり物だから、高級料亭の懐石料理などとは趣が異なるけど、私は美味しく食べた。妻は味付けがしつこいと言っていたが、その点には同意。汗をかくような仕事をしていて、短時間に食事を済ませたいというときに、汗の中に失われたナトリウムを濃い味付けの塩分で補い、短時間にかっ込むためにはこうしたどんぶり物が一番だ。
コリン・ジョイスという人は来日した当初、神戸の日本語学校で語学の勉強をしたらしい。この本の中にそのときの勉強中のことも書いてあった。当然そういった経歴の持ち主だから、本著も彼が日本語で書いたのかと思ったが、その点は違っていた。神戸で日本語を勉強していた時の日本語の先生(の一人?)が翻訳を担当しているようだ。道理で達者な日本語だと思ったが、もしかすると、本人も達者な日本語で文章を書けるのかもしれない。すぐ読み終える分厚さだし、退屈しないのでお奨めだ。
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