半世紀を大きく過ぎる昔、小学校で海風と山風について習った。当時住んでいた所は海岸線からかなり離れて雑木林に囲まれた田畑で、その現象を実感する事はなかった。昼の直射日光を受けると陸地の温度はすぐ上がるが、海水温は大きい比熱のために温度変化が少なく、陸地に上昇気流が生じ、海から比較的涼しい空気が陸地に向かって吹き込む。そして夜間は海水が冷え難いために相対的に陸の温度が下がるので、海に上昇気流が発生。陸から海へ風が吹く。確かそんな理屈だったように思う。
昼間、海水温だって上昇するじゃないかなどと思った記憶も残っているのだが、多分質問の形で自分の疑問をぶつけることはなかったのだろう。真夏、天気予報で35度前後などと予想されている真昼間に海から気持ちのいい風が吹き込む。今の住宅は兼好法師の頃と比べると開口部が少ない。しかし住宅の窓をほぼ全部開け放すと、海からの風がよく通り、エアコンなしで過ごせる。それでも2階部分は多少暑さが堪えるので、休日の昼間は主に1階で過ごす。録りためた映画などを見て過ごすのだ。
気温が上昇するときの上昇気流発生のメカニズムだが、陸地の熱容量が海水のそれよりも小さく、日射を受けると容易に温度が上昇する。海水温も多少上昇するかもしれないが、その差は大きい。だから陸地を覆っている大気の方がより膨張して比重が小さくなる。海面の空気も海面温度の上昇に伴って膨張するはずだが、その差は歴然だ。陸地を覆う大気が上昇すると、海面の大気は上昇するよりまず陸地に吹き込み、陸地にあった空気が空の彼方に上がっていった後で生じた気圧の低下を埋める…
夜は反対の事が起こるのだが、放射冷却と言うものがあり、好天の方がその冷却効果は大きい。だから夜になってどんより曇って来ると、山風が吹かずに空気が淀んでしまう。仮に吹いても、夜は蚊などの吸血昆虫が部屋に侵入するのを避けるために窓を閉めている。従って夜間はエアコンのお世話になっている。しかし昼間エアコンを使わないので真昼の酷暑時にピークを迎える電力需要に対しては大きく貢献できるのではなかろうか。なお昼間台風などで強く風が吹く時は窓を閉めてエアコンを使う。
この海風山風なる自然現象は数メートルの外周を持つ岩礁では多分発生しないだろうし、広い陸地の海岸線からやや遠い処でも観測しにくい。そういう意味で外周が8㎞前後のやや小さめの島で地形がそれほど複雑ではないこの場所は観察には好適な環境だ。私が小学校でこの自然現象について聞いた時、実際の現象ではなく理論的な考察だと思った(もちろん当時その様に言語化する事は出来なかった)が、実際にそれが生じている環境に身を置くと「あれは本当の事だったのだ」と実感される。
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