Sh2-240の撮影に挑戦‐あえなく敗北
- 2019/04/07
- 07:28
Sh2-240注)という天体がある。非常に暗く、撮影に難儀する天体だ。昔遠くの恒星が爆発して、星間物質が宇宙に漂っている、その星間物質を写したいと思ったのだ。この天体は20万年ほど前に大質量の恒星が超新星爆発を起こし、外殻の水素が吹き飛ばされて宇宙を漂っているもの。水素の光のうち、3番目の電子軌道から2番目の軌道に落ちる時に位置エネルギーの差額分が電磁波として放出されるもので、バルマー系列のスペクトルの一つ、私たち天体写真愛好家はHαなどと呼んでいる。その波長は6562.8Åだ。爆発から1000年未満で、カニ星雲のようになり、5000年ほど経つと白鳥座の「天女の羽衣」と言われる美しい天体として私たちの目を楽しませる。
藤原定家の日記にも記載されている900年前の爆発は昼間でも星が見えたそうだが、その名残りであるカニ星雲は多くの天体写真愛好家の被写体になっている。そして天女の羽衣と言われる白鳥座の翼付近にある超新星爆発の名残も比較的容易に撮影できて、人気が高い。しかしシャープレスさんが作った改訂版カタログの240番目の天体は手ごわい。かなり手ごわく、一筋縄ではいかない。冷却CCDにナローバンドフィルターでHαだけを濾過して映像として受光素子に取り込むといった手段を講じないとなかなか姿を見せてくれない。そういった対象を、無理を承知で普通のカメラ(と言っても天体用にHαを透過しやすくしたD810a)で狙ってみた。
ISO感度2000で5分間の露出、絞り値はF2.8、焦点距離85㎜だから見えない対象を狙う時に大まかにそのあたりに狙いをつけておけば写るはずだ。合計で80分露出した。翌々日に120分露出をかけた。これもだめだった。強烈な画像処理を施して、かろうじてなんか写っているような気持ちになる、その程度にしかならない。冷却CCDを用いてナローバンドでの撮影条件などを見ても2時間とか露出をかけているので、ノーフィルターで80分では写らないのかもしれない。もしかすると写っているのかもしれないが、トーンカーブの非常に狭い範囲だけを強調するような画像処理しなくてはならないので、雑音を避ける必要がある。
RAWファイルをレタッチソフトで処理する際に、元のデータを可能な限り劣化させない必要があり、私はFITSというファイル形式でPCに保存している。しかしこれは考え物で、一枚当たりファイルサイズが0.5GBに近い、巨大なものだ。これを例えば16コマ撮影してまずFITSに変換すると変換後のファイルサイズが8GB近くにる。それをコンポジットするわけだ。データ保存にかかる費用が安くなっているとはいえ、毎夜の撮影ごとに写真のファイルサイズが15~45GBずつ増えていくとなると問題だ。今回はあえなく敗北を喫したが、いずれリベンジを果たすつもり。ただし、ぎょしゃ座は来シーズンになるかもしれない。その結果はここにご報告しよう。
ここに挙げた写真は順番に富士フィルムX-E1+35mm2.0、ニコンD810a+Aiニッコール85mm1.4、最後が70-200/4.0のズームレンズだ。絞りは最初2つが2.8、最後は4.0、露出時間は5分、X-E1は45分、2枚目は80分、3枚目は120分、2枚目に見られる赤い多数の点は昔のレンズのために収差で赤がにじんでできたものと考えられる。デジカメの受光素子が赤い光をカットするように作られる理由はこの辺りにあるのかもしれない。
注)ネット検索するとシャープレスという記載を目にする。確かにSh2にリストアップされている天体はシャープな輪郭を持つのが少ないので、シャープレスだと合点してはいけない。シャープレスと言う人がHα領域の散光星雲リストを作った。あとで作り直し、たくさん網羅したので、シャープレスさんが作った2番目のリストという意味でSh2と表記するのだ。なおシャープレスさんは2013年にお亡くなりになったそうだ。合掌。
藤原定家の日記にも記載されている900年前の爆発は昼間でも星が見えたそうだが、その名残りであるカニ星雲は多くの天体写真愛好家の被写体になっている。そして天女の羽衣と言われる白鳥座の翼付近にある超新星爆発の名残も比較的容易に撮影できて、人気が高い。しかしシャープレスさんが作った改訂版カタログの240番目の天体は手ごわい。かなり手ごわく、一筋縄ではいかない。冷却CCDにナローバンドフィルターでHαだけを濾過して映像として受光素子に取り込むといった手段を講じないとなかなか姿を見せてくれない。そういった対象を、無理を承知で普通のカメラ(と言っても天体用にHαを透過しやすくしたD810a)で狙ってみた。
ISO感度2000で5分間の露出、絞り値はF2.8、焦点距離85㎜だから見えない対象を狙う時に大まかにそのあたりに狙いをつけておけば写るはずだ。合計で80分露出した。翌々日に120分露出をかけた。これもだめだった。強烈な画像処理を施して、かろうじてなんか写っているような気持ちになる、その程度にしかならない。冷却CCDを用いてナローバンドでの撮影条件などを見ても2時間とか露出をかけているので、ノーフィルターで80分では写らないのかもしれない。もしかすると写っているのかもしれないが、トーンカーブの非常に狭い範囲だけを強調するような画像処理しなくてはならないので、雑音を避ける必要がある。
RAWファイルをレタッチソフトで処理する際に、元のデータを可能な限り劣化させない必要があり、私はFITSというファイル形式でPCに保存している。しかしこれは考え物で、一枚当たりファイルサイズが0.5GBに近い、巨大なものだ。これを例えば16コマ撮影してまずFITSに変換すると変換後のファイルサイズが8GB近くにる。それをコンポジットするわけだ。データ保存にかかる費用が安くなっているとはいえ、毎夜の撮影ごとに写真のファイルサイズが15~45GBずつ増えていくとなると問題だ。今回はあえなく敗北を喫したが、いずれリベンジを果たすつもり。ただし、ぎょしゃ座は来シーズンになるかもしれない。その結果はここにご報告しよう。
ここに挙げた写真は順番に富士フィルムX-E1+35mm2.0、ニコンD810a+Aiニッコール85mm1.4、最後が70-200/4.0のズームレンズだ。絞りは最初2つが2.8、最後は4.0、露出時間は5分、X-E1は45分、2枚目は80分、3枚目は120分、2枚目に見られる赤い多数の点は昔のレンズのために収差で赤がにじんでできたものと考えられる。デジカメの受光素子が赤い光をカットするように作られる理由はこの辺りにあるのかもしれない。
注)ネット検索するとシャープレスという記載を目にする。確かにSh2にリストアップされている天体はシャープな輪郭を持つのが少ないので、シャープレスだと合点してはいけない。シャープレスと言う人がHα領域の散光星雲リストを作った。あとで作り直し、たくさん網羅したので、シャープレスさんが作った2番目のリストという意味でSh2と表記するのだ。なおシャープレスさんは2013年にお亡くなりになったそうだ。合掌。
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